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紡ぎ合う詩 約束

last update Last Updated: 2025-06-04 07:00:00

 ◻︎紡ぎ合う詩

 彼女はいつもいつも詩を紡いで想いを乗せて僕へと送る。心に耳に、脳に体に。ふふふと悪戯っ子みたいに微笑む彼女を忘れる事なんて出来ない。

 陰と陽。二つに分かれた彼女の姿を見たのは僕だけだろう。抱え込む傾向にあるから、滅多に人に出さないと思う。まるで鏡のようだ。『外』の彼女が鏡に手を触れる。悲しそうに、一言呟いて涙する。それに反応するように『中』の彼女が鏡の内側から手を伸ばし鏡に触れる。微笑みと闇に包まれて。

 『両極端』そう言えば簡単なのかもしれない。他の説明の仕方が分からない。不思議なバランスの心で出来ている彼女。僕がすこし手を離すと、もう二度と戻らないと不安でいっぱいになってしまう程。

「手放したくないのなら、探してごらん」

 いつもの口癖で僕を試すんだ。そうやって微笑みながらも、言葉で翻弄させながら、確かめる。

 それだけ彼女は用心深く、脆い、そして優しいのかもしれない。

 優しさは複数の優しさがある。

 包む優しさ

 共に泣く優しさ

 怒る優しさ

 そして『突き放す』優しさ

 彼女は人の性格によって『やさしさ』を変えていく。

 少しの疑問を漂わせて、相手が自分で考えて『成長』出来るように、誤魔化して空間を見つめている。

「あたしの本当の姿は、見えないだろうね」

 『僕も?』

「難しいと思うよ」

 『なんで?』

「あたしの背負っているものにも気付けない。表面と内側のギャップにも気付けない」

 『他の人よりは、気づけたよ?』

「まだ足りない」

 不思議な言葉を残す彼女は言葉を操る。

 心理を少し学んだと聞いた事がある。

 それは『あの人』の為だと……。

 そして『経験』だと……。

 抱え込むものの複雑さを理解しているのは『僕
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